本記事では,トレーニングにおいて重要となる「サイズの原理」という筋肉のメカニズムについて紹介します.
さらに,この「サイズの原理」が適用されない3つの例外について紹介し,効率的に筋肉をつけるコツを紹介します.
サイズの原理とは
サイズの原理とは1973年に発表された「筋肉のメカニズム」で
負荷が軽いときは「遅筋」から使われる
という筋肉の原則です.
そもそも筋肉が収縮するときには,筋肉を構成する筋繊維が収縮します.
例えば上腕二頭筋の場合(力こぶの筋肉です),約20万本の筋繊維から構成されています.
このとき,20万本の筋繊維がちょっとずつ収縮するのではなく,負荷に応じてその一部の筋繊維が収縮します.
では,どの筋繊維から優先的に収縮するのかということですが,
負荷が軽いときには「遅筋」から優先的に収縮に使われるというのが「サイズの原理」です
「サイズの原理」が成り立つのは,出せる力(サイズ)の小さな筋肉が優先的に使われるためです.
遅筋の場合は酸素を使って収縮することができるので,効率的にエネルギーを使うことができます.
しかし出せる力は小さいです.
一方で速筋の場合は,出せる力は大きいのですが,エネルギー効率が悪いという特性があります.
参考記事:速筋と遅筋の収縮メカニズム(工事中)
そのため,大きな力を出す必要がないときには,「遅筋」から使った方が身体全体としてエネルギー効率が良く,やむを得ず大きな力を出すときだけ,「速筋」を使うことになります.
以上のメカニズムがあるため,
筋トレにおいて,軽い負荷(最大筋力の30%程度)を使用している場合は,ほとんど遅筋しか使われません.
速筋を使うには少なくとも65%1RMの負荷が必要だと言われています.
また,
トレーニングで筋肉が大きくなるのは,速筋が太くなるからであり,遅筋はほとんど太くなりません
そのため,筋肉を大きくするには重い負荷で「速筋」を収縮させて,トレーニングをする必要があります.
この「サイズの原理」があるため,自宅で低負荷でトレーニングをしても,なかなか筋肉がつかないということになります.
そこで,次に示す「サイズの原理」の例外をうまく使うことが重要です.
「サイズの原理」の例外
ここまで「サイズの原理」を紹介しましたが,実は軽い負荷でも速筋が使われる,サイズの原理の例外が3パターン存在します.
この例外をうまく使うことで,より効率的に筋肉をつけたり,家トレで低負荷で筋肉を鍛えることができます.
「サイズの原理」の例外1:「瞬発的な力を発揮する場合」
例外の1つ目は,瞬間的に大きな力を出す場合です.
遅筋は瞬発的に筋肉を収縮させることができません.
そのため一気に力を発揮するときには,収縮速度が速く,大きな力も出せる「速筋」を優先的に使えるようになっています.
そのため反復横とびのような切り返し動作が必要となるトレーニングでは,負荷が小さくても「速筋」が優先的に使われます.
ただ,ジムや家で「切り返し動作」をするのは騒がしくなりすぎるため応用しにくいですが,そうしたトレーニングもあると知っておくと良いです.
「サイズの原理」の例外2:「伸張性収縮をしている場合」
伸張性収縮(ネガティブ動作)をしている場合は,負荷が小さくても「速筋」から優先的に使われることが知られています.
伸張性伸縮とは重りを下げながら筋力を発揮する動作です.
これは筋肉をブレーキとして使うケースになります.
ブレーキをかけて運動を止めるという動作は,失敗すると重りが急落下して怪我をする恐れがあるため,重要な動作です.
そのため,出せる力とスピードが遅い「遅筋」から使っていると危ないため,「速筋」が優先的に使われるようになっています.
この点を有効に使い,
重りを下げる動作を丁寧にやることで「速筋」が優先的に使われ,筋肉をより効率的に大きくすることができます
「サイズの原理」の例外3:「酸素が少ない場合」
筋肉に供給されている酸素の量が少ない場合,負荷が小さくても「速筋」が優先的に使われます.
なぜなら,筋肉に供給される血液が制限された場合に,筋肉中の酸素が少なくなり,酸素が少ないと「遅筋」は収縮できないため,「速筋」が使われるからです.
この原理を利用したのが「加圧トレーニング」と呼ばれる手法になります.
ただし,「加圧トレーニング」は圧力をコントロールしたバンドを使用するため,個人ではできません.
ただ同じメカニズムをトレーニングで再現することはできます.
これがよく言われるセット中に「力を抜いてはいけない」というトレーニングのこつです.
重りを上げるときも,下げるときも対象の筋肉から力を抜かないようにすることで,ずっとその筋肉には力が入っていることになり,血流が制限されます.
すると1セット中の後半は筋肉に血液からの酸素の供給が少なくなるため,より優先的に「速筋」が使われるようになります.
このテクニックはジムでも家トレでも導入できます
これがきちんとできるかどうかで,トレーニングの質が大きく変わりますので,ぜひ身につけて欲しいテクニックです.
以上,「サイズの原理」に関する解説とその例外の紹介でした.
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