本記事では,筋トレをしていて「筋肉がパンプアップするメカニズム」と「パンプアップの重要性」について解説します.
筋肉がパンプアップするメカニズム
筋トレをし終わると,筋肉が盛り上がり,大きくなったように見えます.
この現象は「パンプアップ」と呼ばれます.
直感的には,「血液が筋肉にたまって大きくなったのかな?」と思うのですが,少し違います.
このパンプアップという現象は
血液中の水分が筋肉に溜まる現象です
その結果,筋肉中の水分量が多くなり筋肉が大きくなります.
「なぜ筋肉に水分がたまるのか?」について説明します.
以下の図をご覧ください.
トレーニングしていると,筋肉の収縮を繰り返すことで「カルシウムイオン」や「乳酸」などの物質が筋肉中に溜まっていきます.
すると筋肉の内部の「カルシウムイオン」や「乳酸」の濃度が,血液中よりも高くなります.
こうして濃度の差が生まれると,その濃度を一定にする働きが生まれます.
もし自由に「カルシウムイオン」や「乳酸」が筋細胞から血液中に移動できるのであればよいのですが,実際には筋細胞から血液中に乳酸などは移動しにくいという性質があります.
そのため筋肉と血液で濃度を一定にするために,移動しやすい「水」が血液から筋肉へと移動します.
この結果,筋肉中の乳酸などの濃度が薄まり,血液中も筋肉中も同じ濃度になります.
このような現象は浸透現象と呼ばれます.
最終的に水を多く含んだ筋肉は膨張し,パンプアップします.
パンプアップの重要
筋肉中の「乳酸やカルシウムイオン」の濃度が高まることで,血液中の水分が筋肉に移動し,パンプアップすることが分かりました.
ではこのパンプアップは筋肉を大きくするうえで,どんな意味を持つのでしょうか?
第一に,水分で筋細胞が大きくなると,細胞膜が引き伸ばされることになります.
すると,細胞膜が破れないようにもっと細胞自体を大きくしようと,収縮タンパク質などを合成するシグナルが細胞核に送られ,筋肉合成のスイッチが入ります.
このようにパンプアップは直接的に筋肉を大きくする作用があります.
しかし,間接的に筋肉を大きくする作用の方が重要です.
パンプアップがより激しく起こるのは,「カルシウムイオン」や「乳酸」などの筋肉中の濃度がより上昇したときです.
そして筋肉中の化学センサーは「カルシウムイオン」や「乳酸」の濃度に応じて,成長ホルモンやIFG-Iといった,筋肥大に重要な物質の分泌を促します.
また筋細胞のタンパク質合成回路(mTOR回路)も,カルシウムイオンの濃度が高いほど活性化します.
mTOR回路と筋肥大の関係:初心者・中級者が劇的に筋肉をつけるコツ③
そのため,「カルシウムイオン」や「乳酸」の濃度が高いときほど,より筋肉の合成が活性化します.
よって,
パンプアップの程度は,どれだけ濃度が上昇したかの指標であり,その後どれだけ筋肉合成が活性化するかの指標となります
トレーニングでパンプアップさせるひとつのコツは,「セット中に筋肉から力を抜かないようにして,血流を制限すること」です.
カルシウムイオンや乳酸は血液中に流れ出しにくいとはいえ,少しずつは流れ出て行きます.
しっかり筋肉から力を抜かないようにすることで,血流を制限し,より筋肉中の濃度を上げることができます.
また力を抜かないことで,筋肉中の酸素が少なくなることで「サイズの原理」の例外となり,速筋をより効率的に鍛えることもできます.
以上,パンプアップのメカニズムと重要性の解説でした.
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